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福崎町古民家再生プロジェクト(10)

古民家再生 建築家 リノベーション まちづくり

福崎町古民家の完工間近の様子を確認しに行ってきました。

内装はほぼ仕上がり、植栽などの外構工事も順調に進み、工事も終わりを迎えようとしています。外構は、駐車場も含め、かなり広い範囲の施工ですが、建物をうまく引き立てつつ、木々やベンチなど自然に人が集える場を作りだせているように思います。

手前中央の台のような空間は、イベントの時にも使えそうですね。単に古い木造建築をリノベーションしたというだけでなく、これからの活動をとおして地域の人に親しまれ、日常的に活用される施設となることを望んでいます。


古民家再生 建築家 リノベーション まちづくり

かなり仕上がってきたのが分かると思います。オレンジ色の深い光沢を放つイタリアンスタッコ「ガラッシア」と、その下の黒い吹付け壁の対比がなかなか良い感じです。他にも様々な素材を組み合わせているのですが、それは正式な竣工写真を撮ってから見ていただきます。

全体的には、まだクリーニングが終わっていないので雑然としていますが、大方イメージどおりであると確認できました。

古民家のリノベーションというと、構造体などには手を付けずに表面的な部分だけのDIYに近いような改修が多いように感じますが、今回の再生プロジェクトのようにコストも時間もかかり、おおがかりにはなりますが、やはり一番大事なところからきちんと手を入れることでできる完成度というのを感じる出来栄えになりそうです。


古民家再生 建築家 リノベーション まちづくり

古民家のリノベーションは、元の建物が窓が多い場合が多いので、この建物についても既存の窓が多く、それらを古い日本建築の様式を踏襲しつつ、うまくデザインしながら現代的なテイストと、さらに最高レベルの断熱性能を確保する必要がありました。

写真は、道路側から撮った写真ですが、外から内、内から外の関係において、あまりお互いに見えすぎるのもデリカシーに欠けるので、格子を付け、波模様のフィルムを貼っています。デザインとしても、透明ガラスが入るだけだと、なんとなくのっぺりとして退屈なので、このあたりは細かい配慮が必要です。

サッシは、Low-E複層ガラスで中空層にアルゴンガスを注入したタイプを採用しています。昔は断熱という考えがないので、夏は暑くて冬寒いというのが当たり前と思って、断熱については諦めている方も多いようですが、最新の技術と施工がさまざまな問題を解決してくれる時代です。


古民家再生 リノベーション 建築家 まちづくり

上の窓の写真を部屋の中から見たところです。波板のフィルムを貼っただけですが、外の様子がぼやけて、適度に外部環境とつながっていると言えます。大きなガラス一枚だけだと、どうしても単調なデザインになってしまいます。

 

また、格子は昔の家のスケール感を感じるのにはどうしても必要だと感じたので取り入れています。「小さく、細かく」というのが、このような案件を成功させる秘訣かなと思います。格子を付けるのは、サッシのオプションで用意されており、安価なコストでできるのでデザイン性を高める際にはおすすめです。

 


古民家再生 リノベーション 建築家 まちづくり

アプローチと地続きの広い土間は、古民家ならではの空間です。このプロジェクトでもできるだけ広く確保し、窓をたくさん設けました。そこに2階へ上がるための階段を設置しています。

階段の背後には、クロークがあり、そこから寝室にもつながっています。現代の住宅においては、回遊性がとても重要であり、忙しい生活を送る施主からも求められることなので、古民家をリノベーションして住む場合でも妥協せずに納得のいくプランとするべきでしょう。

ここでもオレンジのイタリアンスタッコと濃い茶色の梁とのコントラストが効いてます。


古民家再生 リノベーション 建築家 まちづくり

2階からリビングを見下ろしたところ。この高い天井をいかした大きな空間が古民家の最大の魅力と言えるでしょう。元々そのように出来ているのですから、あとは現代の生活にふさわしいデザインと断熱性能、設備を付与すれば、広々とした快適な家のできあがりです。

新築の家は、最初から自由にプランニングできるように思いますが、都市部だと広い敷地を確保するのはむずかしく、厳しい法規制に縛られるので、かなりの創意工夫が求められます。

最初から広い敷地と家というベースとなる素材が用意されている古民家は、立地さえ気に入れば、大きな可能性を秘めた選択肢と言えるでしょう。


古民家再生 リノベーション 建築家 まちづくり

キッチンも既に据え付けられています。今回はパナソニックのLクラスをチョイスしています。既存の古い梁のおかげか、すでにノスタルジックな雰囲気が漂っています。新しく貼ったレトロなタイルもよく馴染んでいました。

奥の背面キャビネットは、スタンダードな価格のものですが、把手だけを別のものを取付け、こちらもレトロなイメージに仕上がりました。お金をかけて表現するところと、頭を使って、安くても良いデザインに仕上がる方法を採用することで賢く、良いデザインの家を手に入れることができます。


古民家再生 リノベーション 建築家 まちづくり

この建物には、吹抜けが2カ所あり、こちらが小さい方です。天井には2カ所共にシーリングファンを取り付けています。

この建物のように天井の高い空間には必須とも言える設備です。今回はシンプルなデザインのものを選びましたが、様々なデザインのものが発売されていますので、空間に合わせて選ぶ楽しみもあります。

奥に見えているのは坪庭です。


古民家再生 建築家 リノベーション まちづくり

母屋の話ばかりなので、蔵についても触れておきます。

外壁はしっくいと、写真の焼杉の組み合わせです。焼杉は、すでに炭化しているので一般的な木材よりも傷みにくいというメリットがあります。自然素材を使うと、どうしても劣化やそのメンテナンスの為のコストで頭を悩ませることになりますが、昔の人はこのような知恵で、素材の風合いを保ちつつ、手間も省けるということを知っていたのですね。古い建物には、このような素材がよく似合うということもあり、いつもと違う素材のチョイスができるので設計者として、とても楽しむことができています。


最後に今日のランチについて。

現場のすぐ近くに、同じく古民家を改修したピザ屋さんがあり、前から行きたかったのですが、お休みの日だったりで行きそびれていたところです。窯焼きピザのお店で『Pizzeria da FIORE (ピッツェリア ダ フィオーレ)』です。

ランチセットで、ピザとパスタを選べたのですが、迷わずピザを選択。貝柱とキノコがたっぷりのっていて、とてもおいしかったです。

 

すぐ近くにこのような古民家の活用したお店があり、今回のプロジェクトによりまたひとつ再生事例が増えることになります。とはいえ、まだまだ数が少ないので、古民家を再生して民泊としたり、もちろん自宅として住むなど、もっと成功事例が増えると良いなと思いました。

ごちろうさまでした。

リノベ後の写真はこちらから!


古民家の再生や移築には、専門的な知識、ノウハウが必要となります。宿泊施設などに利用したい方などのために、企画プロデュースからお手伝いいたしますので、お気軽にご相談ください。